夢に出てくる男This Manの正体は?世界を騙した都市伝説の真相
太く左右がつながった眉毛、薄い頭髪、そして貼り付いたような薄気味悪い笑み――。一度見たら脳裏に焼き付いて離れない肖像画とともに語り継がれる「夢に出てくる男」の都市伝説は、かつて国境を越えてネット空間を震撼させました。「全く見ず知らずの他人が、なぜ同じ顔の男を夢の中で目撃するのか」という謎は、オカルトファンのみならず一般のネットユーザーまで巻き込み、世界的な集団怪談へと発展した歴史を持ちます。
日本国内でもテレビ番組『世にも奇妙な物語』の題材や映画化のモチーフとなるなど、今なお冷めやらぬ知名度を誇るこの現象ですが、その背後には緻密に計算された仕掛けが存在していました。超常現象のベールに包まれていた怪異の始まりから、暴かれた驚くべき種明かし、そして人間が「同じ夢を見る」と錯覚してしまう心理的メカニズムまで、客観的な記録をもとにその全貌を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「This Man(ディスマン)」の正体は、イタリアのマーケティング専門家アンドレア・ナテッラが仕掛けたバイラルマーケティングの産物。
- 要点2:ニューヨークの精神科医による報告という設定は巧妙な創作であり、実在する心霊現象や超常現象ではないことが確定している。
- 要点3:「自分も夢で見た」と錯覚する背景には、画像を見たことによる事後的な記憶の改ざん(偽記憶)や心理学的な暗示効果が強く作用している。
【発端と怪異】世界中で数千人が目撃?「This Man」都市伝説の戦慄の筋書き
「夢に出てくる男」として世界中を恐怖に陥れた都市伝説の発端は、2006年のアメリカ・ニューヨークに遡ると語られてきました。ある精神科医院を訪れた一人の女性患者が「現実で一度も会ったことがない見知らぬ男が、何度も夢の中に現れて親しげに語りかけてくる」と訴え、医師に促されてその男の顔をスケッチしたことから怪異が幕を開けます。
その数日後、診察室のデスクに置き去りにされていた似顔絵を見た別の男性患者が「自分もこの男を夢で頻繁に見る」と証言。不審に思った医師が同僚の医師たちに似顔絵のコピーを配布したところ、わずか数ヶ月のうちに4人もの患者が同じ男の夢を見ていると判明した――これが、ネット上で広く語られた「ディスマン 都市伝説」の原点となるストーリーです。
その後、事態を重く見たとされる医療関係者によって「Ever Dreamed This Man?(この男を夢で見たことがありますか?)」と題された専用サイトが開設されました。サイト上にあの不気味なモンタージュ写真の男のイラストが掲載されるや否や、世界中から「私も夢で見た」「夢の中で彼にアドバイスされた」「悪夢で襲撃された」といった報告が殺到。目撃情報は北米からヨーロッパ、南米、アジアへと拡大し、報告総数は2,000件以上(最終的には数万件超とも喧伝)に達したと主張されました。
日本でもネット掲示板を中心に「夢男の真相」を巡る議論が白熱し、2017年にはフジテレビ系列の人気番組『世にも奇妙な物語』において中条あやみ主演で「夢男」としてドラマ化。劇中で街中の至る所にあのモンタージュが貼られ、人々の精神を侵食していく描写は大きな話題を呼び、オカルト現象としての知名度は決定的なものとなりました。
【真相の暴露】仕掛け人は誰か?判明したバイラルマーケティングの全貌
世界中の人々を震え上がらせた「夢に出てくる男」の伝説ですが、その正体は人知を超えた心霊現象でも未解決の超常現象でもありませんでした。事件の核心は、イタリアの広告業界で活動していた社会学者でありマーケティング専門家、アンドレア・ナテッラ(Andrea Natella)が考案した「バイラルマーケティング(ゲリラ・マーケティング)」の実験だったのです。
この驚くべき事実が露呈したきっかけは、ネットユーザーたちによるドメイン調査でした。不可解な目撃情報を集めていた「everdreamthisman.com」の登録情報を解析したところ、サイトの所有者として浮上したのが、ナテッラが代表を務めるイタリアの広告代理店「KOKOKOO」だったのです。同社は虚構のストーリーを現実に溶け込ませて世論の反応を観察する「偽装ゲリラ・キャンペーン」を得意とするクリエイティブ集団でした。
追求を受けたアンドレア・ナテッラは、最終的に「This Man」のプロジェクトが自身の手による創作であることを認めました。不気味な肖像画は、実在の誰かをモデルにしたものではなく、あらかじめ「どこにでもいそうでありながら、どこか不安を掻き立てる絶妙な顔立ち」を狙って意図的に合成・描画されたものです。
海外都市伝説の真相を追うリサーチャーたちの検証によれば、このプロジェクトは当初、ホラー映画のバイラル・プロモーションの一環、あるいは「人間がネットの情報をどのように受容し、集団幻覚を形成していくか」を検証する社会実験として立ち上げられたものでした。結果として、映画の枠組みを大きく超えて独り歩きし、世界中のネットユーザーを騙し抜く大掛かりな「フェイク・ロア(偽の伝承)」として完成してしまったのです。
【比較検証】This Man都市伝説の虚構と現実|データで読み解く拡散の実態
オカルト検証まとめの観点から、語られていた「怪談の設定」と、調査によって判明した「客観的な事実データ」を比較・整理した結果が以下の通りです。
| 項目 | 伝説上の設定(都市伝説) | 判明した客観的事実 | 編集部の見解・分析 |
|---|---|---|---|
| 発端の経緯 | 2006年、NYの精神科を受診した女性患者のカルテ | 2008年、伊広告代理店によるドメイン取得とサイト開設 | 「精神科医の診察記録」という権威付けを用い、信憑性を偽装。 |
| 仕掛け人の正体 | 正体不明の謎の男、または超常的存在(ドリーム・サーファー) | アンドレア・ナテッラ(広告プランナー・社会学者) | 明確な意図を持ったゲリラ・マーケティングの企画。実在の怪異ではない。 |
| 世界規模の目撃者数 | 世界各地で2,000人以上(のちに数万人規模と主張) | サイト側が誇張した自作自演、および投稿フォームへの悪乗り | 数字の肥大化自体がバイラル効果を生むための演出装置として機能。 |
| メディア拡散のピーク | ネット掲示板や怪談サイトでの自然発生的な伝播 | 2009年10月の大手ニュースサイト報道と大手SNSでの拡散 | 既存の大手メディアが事実確認を怠り記事化したことで爆発的に拡大。 |
【なぜ同じ夢を見るのか】集団幻覚と心理学が解き明かす「脳の錯覚」
マーケティングの仕掛けであったことが判明した後も、多くの人々が抱いた疑問がありました。「仕組まれた偽物だとしても、なぜ自分は本当にあの男の夢を見た気がしたのか」という点です。ここには、人間心理の脆弱性と集団幻覚と心理学の観点から説明できる複数の認知バイアスが働いています。
最大の要因は、認知心理学における「フォールスメモリー(虚偽記憶)」と「プライミング効果(先行刺激による無意識の誘導)」です。人間が睡眠中に見る夢の記憶は極めて曖昧で断片的なものです。目が覚めた直後には輪郭すら定かではなかったはずの夢の残像に対し、後から「この男の顔を夢で見たことがありますか?」という強い誘導を伴ったインパクトのある画像を提示されると、脳は無意識に「自分が夢で見たのはこの顔だった」と記憶の空白を都合よく上書きしてしまいます。
さらに、This Manの公式サイトでは、この現象を合理化するために複数のオカルト的仮説が意図的に提示されていました。 スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングが提唱した「集合的無意識(人類共通の無意識の領域に存在する元型=アーキタイプ)」を持ち出したり、「超能力者が人々の夢に潜入しているドリーム・トラベラー説」、あるいは「特定の大企業が人々の精神を操作している陰謀論」といったシナリオです。
これらのストーリーテリングが読者の知的好奇心を刺激し、「科学では証明できない神秘的な体験をしている自分」に陶酔させる心理的誘導として機能しました。一度画像を見て強い恐怖や違和感を覚えた人は、その強い情動記憶が脳に焼き付くため、実際にその後の睡眠で「This Manの夢を見てしまう」という予言の自己成就が多発したのです。これが、見知らぬ他人が同じ夢を見る理由の科学的な実態です。
【実態検証】ネットの反応と拡散経緯|恐怖からネットミームへ
2009年秋、海外のソーシャル掲示板Redditや4chan、Twitter(現X)などを起点に爆発的な広がりを見せたThis Man騒動は、日本国内でも独自の発展を遂げました。
当時の日本の大手匿名掲示板5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のオカルト板や知恵袋などでは、「昨晩金縛りに遭ったときにこの男が立っていた」「寝るのが怖くて電気を消せない」といったリアルな恐怖体験の告白が相次ぎました。画像そのものが持つ不気味の谷現象(人間に近いがどこか歪んでいる造形が引き起こす嫌悪感)が、視覚的なショックとして受け手の心に深く突き刺さったためです。
しかし、正体がマーケティングであると特定されて以降、ネットユーザーの態度は一変します。恐怖の象徴だった男の肖像画は、瞬く間に「コラージュ画像の素材」や「ネットミーム」へと消費の形を変えていきました。アニメキャラクターと合成されたり、アイドルの顔に挿入されたりと、恐ろしい怪異はユーモラスないじりの対象へと脱色されていったのです。
それでもなお、文化としての影響力は途絶えていません。2024年には日本で映画『THIS MAN』が公開され、夢に現れた男が現実世界で連続変死事件を引き起こすサイコ・スリラーとしてリブートされました。虚構であることが周知された後もなお、エンターテインメントの題材として繰り返し蘇る点に、この都市伝説が持つ卓越したコンセプト設計の強さが見て取れます。
【プロの結論】オカルト情報とネット社会に踊らされないためのリテラシー
This Manという現象が残した最大の教訓は、「人間は、自分が信じたい物語や恐ろしい演出を与えられると、自らの記憶すら容易に捏造してしまう」という事実です。現代の情報環境において、私たちは日々膨大なフェイクニュースや巧みに演出されたバズ動画に晒されています。オカルト情報やネット上の都市伝説と対峙する際、どのような姿勢を持つべきなのか、判断基準を明確にしておく必要があります。
【オカルト・ネットロアを健全に楽しめる人の条件】
- 「演出されたフィクションや都市伝説」を一つの現代民俗学・エンターテインメントとして客観視できる。
- 感情を揺さぶられる情報に出会った際、一次ソースやドメイン所有者、客観的な報道事実を照合する習慣がある。
- 自分の記憶や体験であっても、脳の錯覚や暗示によって後から変容し得ることを理解している。
【オカルト情報と距離を置くべき人の条件】
- 不気味な画像や怪談を見た後、数日間にわたって睡眠障害やパニック、強い不安症状を引き起こしてしまう。
- 「医師が認めた」「世界中で目撃された」といった権威付けのフレーズを無条件に鵜呑みにしてしまう。
- 陰謀論や超常現象の枠組みで物事を説明しようとし、科学的・論理的な反証を受け入れられない。

【夢に出てくる男 都市伝説】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:This Man(夢に出てくる男)は実在する人物なのですか?
A1:実在しません。イタリアのマーケティング専門家であるアンドレア・ナテッラが、意図的に制作した架空のイラスト(モンタージュ)です。特定のモデルとなった実在の人物も存在しないことが判明しています。
Q2:画像を見た後、本当に夢に出てきた場合は呪いや心霊現象ですか?
A2:呪いや心霊現象の可能性はありません。強烈な違和感を持つ画像を見たことによる「プライミング効果」や、就寝前に強く意識したものが夢に反映される一般的な脳の生理現象によるものです。過度な心配は不要であり、数日経てば記憶が薄れるとともに見なくなります。
Q3:なぜこれほど精巧な嘘が世界規模で信じ込まれたのですか?
A3:「精神科医の診察室から始まった」という権威ある設定、ユング心理学などの専門用語を絡めた巧妙なストーリーテリング、そして画像自体の不気味さがネットの拡散心理と合致したためです。大手メディアが十分なファクトチェックを行わずに報道したことも、信憑性を高める要因となりました。
まとめ:虚構から学ぶデジタル時代の現実と情報の見極め方
世界中の人々が同じ顔を目撃したという「夢に出てくる男」の都市伝説は、一人の広告クリエイターの手によって仕組まれたバイラルマーケティングの傑作でした。「This Man」の正体が暴かれた現在でもこのエピソードが語り継がれているのは、単なる悪質なデマとして片付けられないほど、人間の認知の歪みや集団心理のメカニズムを鮮明に浮き彫りにしたからです。
「見たこともない男の夢を見る」という怪異の正体は、外の世界からやってきた怪異ではなく、私たち自身の脳が見せた暗示と錯覚でした。怪奇現象の背後に潜む合理的なからくりを知ることは、恐怖心を払拭するだけでなく、溢れかえる情報の中から事実と虚構を見分けるための確かなリテラシーを与えてくれます。 (出典: 夢に出てくる男 都市伝説(Yahoo!ニュース))